代表取締役武村 貴史

Takemura Takafumi

ING 30周年

100年続く会社を創る
夢であり使命として

そのとき私たちは、名もなき戦士として
INSの歴史の一部となり、共に生き続ける

あの歓びを味わうために

何の目的も目標もなく過ごした大学生活。ただ、今も忘れ得ぬ思い出があります。
 それは、仲間4人でテレビ番組の水陸両用車レースに出場した時のこと。何の知識も技能も持たない学生たちです。車両の製作技術や設備は、大学の先生と先輩に協力して頂き、資金は多くの方々にカンパをお願いして工面しました。
 製作に入ると、毎日のように問題が起こり、幾度も出場不能の危機に晒されました。しかし、困難な問題に直面するたび、皆の知恵とチームワークで一つ一つ乗り越えていくことができ、それが少しずつ小さな喜びと自信に変わっていきました。車両製作は日夜続きましたが、苦労とは感じず、ひたすら作業に没頭している自分たちの姿がそこにありました。
 いよいよ完成し、水上でテストする日がやってきました。場所は五色浜の海岸。大勢が見守る中、仲間4人が乗り込み、海めがけて勢いよく突っ込みました。一瞬、腰の位置まで海中に沈んだ車体が、再び海面高く浮かび上がった瞬間、歓喜の声が上がりました。ペダルを漕ぐと車体がスーッと前に進み、水かきが計算どおりの位置で水しぶきを上げていました。
 こうして私は、みんなで一つのことを成し遂げる歓びを知りました。

創業者 武村勇太郎 大学卒業後、父の縁でIT と出合い、自分が成長する喜び、人の役に立つ喜びを知り、仕事に没頭していきました。気が付けば10 年という月日が流れていました。決して楽な仕事ではなかったのに、どうしてこんな自分でも長続きすることができたのかを考えた時、ITの仕事には、学生時代に味わったあの歓びがあったことに気付きました。そして、今もあの時の歓びを味わいたくて経営している自分がいます。

「100年続く夢」のカタチ

私には夢があります。今でも忘れない、その夢との出合いは突然でした。2009年12月、大阪から北陸に向かう特急列車の中で、ぼんやり車窓から外を眺めながら、未来に思いを馳せていました……

ある日の社内での会話です。
 “ウチの会社、100周年迎えるみたいやけど、これまでどんな歴史があったんやろうね?”

INSが100周年を迎える頃には、私たちは忘れられているかもしれません。しかし、そこには、今と同じように「やりたいことができる社風」、「会社は人。人が宝。」の企業理念が残っていて、それが企業文化となり社内に溶け込んでいる。そして、個性豊かな面々が揃い、自由闊達に仕事をしている。私はそんな未来の社内風景を想像して涙があふれ、止まりませんでした。
 この時、私は「100年続く会社」の夢を実現させると強く心に決めました。その夢を実現した時、私たちは名もなき戦士としてINSの歴史の一部となり、共に生き続けていくのです。

夢は見るものではありません。実現するものです。INSは2018年、30周年を迎えました。今の実力なら40周年は迎えられるでしょう。しかし、50年、100年となれば、どうでしょうか。
 30周年を迎えるにあたって、「ReBORN INS(生まれ変わる)」をテーマに据えました。100年続く夢に近づいていくためには、会社も事業も人も、生まれ変わるぐらいの覚悟と努力が求められるからです。未来に向けて挑戦し続けることでのみ、夢に近づいていけると私は信じています。

「会社は人。人が宝。」

この企業理念には、隠れたメッセージが込められています。企業理念の真ん中に、笑っている人の顔が見えますか?

「お客様と社員、その大切な家族の笑顔が、我が社の『宝』。」

これが、我が社の真の思いです。私は、この企業理念を100年先に届けたいと願っています。

一方、この企業理念のキーワードである「宝」にはルーツがあります。それは、創業者(私からすると父)の武村勇太郎の言葉です。私の兄は知的障がい者で、私は小さい頃から事あるごとに「兄ちゃんは、家の『宝』や」と言い聞かされて育ちました。そして、今の私があります。
 この「宝」には、あるお坊さんの教えがありました。「この子を家の『宝』として大切にしていきなさい。そうすることで家が栄える」この教えは、私の経営スタイルとも重なっています。
 会社で一番大切なのは、社員(人)であり、お客様・取引先様(人)です。私は、“人”をかけがえのない「宝」として何より大切にしていく。そうすることによって会社は栄えていくと信じています。

「宝」の話をもう一つ。私が中学1年の時、父の薦めで、兄がお世話になっていた高知の施設に合宿に行かせてもらったことがありました。
 合宿2日目、施設がある土佐市から室戸岬まで自転車で走破する大会があり私も参加しました。その距離、約90km。一日中ペダルを漕ぐと、お尻にパンツがくっ付きそうになる痛みと、漕いでも漕いでも見えてこないゴール(室戸岬)が、徐々に気力を奪っていきました。
 私は途中でもう駄目だと思い、リタイヤを申し出ようとした時でした。周囲を見回すと、障がい者の彼らは、笑顔でペダルを漕いでいたのです。真正面から風を受けて、笑顔で疾走している彼らの姿を見た時、私は負けたと思いました。
 人間の能力の違いなど関係ない。それより、もっと大切なものがあることを身体で学び取りました。人間、人それぞれ能力の違いはあるとしても、それは多少の違いでしかありません。大事なのは、能力の大小ではなく、授かった命(全知全能)を使いきってあげることではないでしょうか。そうすることで初めて、その命は輝くのだと思います。

以前社内で、企業理念のキーワードである「宝」の部分に、色を感じて欲しいと話をしたことがありました。あとで、感じた色を聞くと、緑・オレンジ・青・ダイヤモンド・玉虫色・シルバー・グレー・透明・レインボーカラー・黄色・白など、たくさんの色がありました。
 それぞれの色は自分自身の色です。それぞれに個性、命があるということです。INSで働く社員には、自分(個性)を磨き、自分らしく輝いてほしいと願っています。そして、その輝きが一つとなって煌めく会社でありたい。幅広い多様性のある組織であり続けたいと願っています。

みんなと出会えて幸せです

ReBORN INS 私は、この会社に携わらせて頂いて、とても幸せです。個性豊かな社員ばかりで、大変なところもありますが、だからこそ楽しい。
 みんなが持っている力や可能性は、現状に留まるものではありません。自分の未知なる可能性にチャレンジしていってもらいたい。
 我々の使命は、日々進化する情報技術を通じて技術研鑽と人間成長を果たし、人にお役立ちしていくことです。その志を、常に胸に抱いて、共に未来に向かって歩んでいきましょう。

最後に、私たちを日頃から支えて頂いているお客様、取引先様、ご家族の皆様に、心から深く感謝申し上げます。これから私たちは新しい未来に向けて、ペダルを漕ぎだします。どうか私たちの新たな船出を見守ってください。そして、社員一人一人への声援、これからもよろしくお願いいたします。